【獣医師が解説】
猫のトイレでソワソワしている…おしっこがでない?
特発性膀胱炎の予防法

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    猫のトイレでソワソワしている…おしっこがでない?
    特発性膀胱炎の予防法

うちの猫が頻繁にトイレに行く、ふんばっている?、おしっこが出ていない、そんな症状を見つけたらすぐに動物病院を受診してください。

猫は泌尿器の疾患に罹患することがとても多く、中には発見が遅れると全身状態が悪化し、入院管理が必要になることもあります。

本記事では、猫のおしっこが出なくなる代表的な原因である「膀胱炎」と「結石」について、獣医師が解説します。なぜおしっこが出なくなるのか、ご自宅で確認できる症状、動物病院での治療、そして再発を防ぐ環境づくりまでを網羅しました。

特に読んでもらいたい方:愛猫がトイレに何度も行くのに尿が出ていない飼い主様。過去に膀胱炎や結石を経験し、再発予防の正しい知識を身につけたい飼い主様。

 

1. 猫のおしっこが出ない時に獣医師が考えることは?

猫のおしっこが出ない(尿閉)、あるいはトイレの回数が増える(頻尿)、血尿が出た、不適切な排尿行動、これらの症状を総称して「猫の下部尿路疾患(FLUTD)」と呼びます。FLUTDの原因は大きく3つに分けられ、尿石症、尿路感染症、特発性膀胱炎があります。

好発年齢は2〜6歳齢で、季節は冬〜春に多く、10歳未満のFLUTDの約7割は特発性膀胱炎、10歳以上のFLUTDの約5割は尿路感染症と言われています。

尿石症

尿に含まれるミネラル成分が結晶化し、膀胱や尿道の中で石(結石)になってしまった状態です。結石が膀胱粘膜を傷つけることで血尿が出たり、結石が尿道に詰まることで、おしっこが外に出せなくなったり、出しづらくなります。

尿路感染症

皮膚の常在菌であるブドウ球菌や、メスでは外陰部と肛門が近いことから腸内細菌が、外陰部から尿道、膀胱内に感染し炎症を起こした状態です。膀胱粘膜の炎症や尿道が炎症によって狭くなってしまうことで、おしっこが出しづらくなることがあります。

特発性膀胱炎

特発性(とくはつせい)とは、医学用語で「原因がはっきりとわからない」という意味です。結石や細菌感染がなく、排尿の異常を引き起こす明らかな疾患がない膀胱炎のことを指します。このため、上記のような尿石症や尿路感染症、腫瘍性疾患ではないことを確認してから、特発性膀胱炎と診断することができます。原因がはっきりしないため、治療も難しいことがあります。

 



真ん中の白い塊が膀胱結石(膀胱結石の症例)

よくある質問(FAQ)①
Q
猫の膀胱炎は細菌感染が原因ですか?
A
細菌感染が原因であることもありますが、そうでないこともあります。

高齢の場合は細菌感染による膀胱炎の方が多いですが、弱齢の場合は特発性(原因がよくわからない)の膀胱炎の方が多いです。

2. なぜ猫は膀胱炎や尿路結石になってしまうのか?

寒くなり飲水量が減る冬〜春にかけて、膀胱炎、特に特発性膀胱炎が増えてきます。尿路結石や細菌性の膀胱炎は季節に関係なく発症がみられます。これらを発症する原因ははっきりしませんが、共通するのは水分不足です。

1. ストレスと環境要因(特発性膀胱炎の主な原因)

特発性膀胱炎の引き金と考えられているのは「ストレス」で、環境因子(引っ越し、新しいペット、来客、工事の騒音、トイレが汚い、トイレの数が足りないといった些細な不満)のほか、水分摂取量が十分でない、肥満などがリスク因子として考えられています。

2. 食事と飲水量(尿路結石の主な原因)

猫の尿路結石には、主に「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」の2種類があります。

  • ストルバイト結石: 尿がアルカリ性に傾くことでできやすくなります。マグネシウムやリンなどのミネラルが多い食事が原因になることがあります。食事療法によって溶かすことができる場合があります。
  • シュウ酸カルシウム結石: 逆に尿が酸性に傾きすぎたり、カルシウムの過剰摂取でできやすくなります。食事で溶かすことができません。

尿路結石は、水分摂取量が十分でないことが大きな一つの要因です。現在よく飼われている猫(イエネコ)は砂漠に住むリビアヤマネコを祖先にもつため、少ない水でも生きられるよう尿を濃縮する能力に長けています。しかし、尿が濃くなればなるほど、尿中のミネラル成分が結晶化しやすくなり、結石は作られやすくなります。

よくある質問(FAQ)②
Q
多頭飼育は膀胱炎のリスクになりますか?
A
リスクが高まる傾向にあります。

猫同士の相性による慢性的なストレスや、トイレを共有することへの不満が特発性膀胱炎の引き金になることがあります。また、他の猫にご飯を取られまいと早食いをすることも、尿のpHバランスを崩す要因になります。

3. 飼い主様が自宅で気付ける症状と、動物病院へ行くべきタイミング

猫の尿トラブルは、初期症状を見逃さないことが重要です。以下の症状に気づいたら早めに動物病院を受診してください。

自宅でチェックすべき初期症状

  • 頻尿:トイレの回数が増えた。1日に何度もトイレに行く。トイレでそわそわしている。
  • 粗相:トイレ以外の場所(布団やソファなど)でおしっこをしてしまう。
  • 排尿痛:トイレの中で「ニャーオ」と悲鳴のような声で鳴く。
  • 血尿:おしっこが赤っぽい、またはピンク色をしている。
  • 過剰なグルーミング:お腹や陰部をしきりに舐める(痛みを和らげようとする行動です)。いつもより舐める回数が多い、時間が長い。
よくある質問(FAQ)③
Q
最近、布団の上でおしっこをするようになりました。これも病気のサインですか?
A
病気の可能性があります。

不適切な排尿行動は、しつけの問題ではなく、膀胱炎の症状の一つとして現れることがあります。排尿時に痛みがあるため、「トイレに行くと痛い」と学習してしまい、柔らかくて安心できる布団やクッションの上で排尿してしまうようです。

緊急な症状:尿道閉塞を見逃さない

一番恐ろしいのは、結石や炎症の産物(栓子)が尿道に詰まり、おしっこがほとんど、あるいは全く出なくなる「尿道閉塞(にょうどうへいそく)」です。これはオスの猫に圧倒的に多く見られます。オスの尿道はメスに比べて細くて、かつペニスがあるのでメスより長いので、物理的に詰まりやすい構造をしています。この時、膀胱は大きく膨張し、容易に手でお腹側から触ることもできます。

おしっこが出なくなり、体外に排出されるべき老廃物が排出されないことで、急性腎不全(AKI)を引き起こします。血中のカリウム値が上昇することで致死的な不整脈の恐れがあり、尿閉の発症から48時間以内に処置が必要です。

様子を見てもギリギリOKな症状(翌日受診) 今すぐ救急病院へ行くべき症状(夜間でも!)

・おしっこは出ているが回数が多い
・おしっこに少し血が混じっている
・元気や食欲はいつも通りある

・トイレでそわそわしているのにおしっこが出ていない
・嘔吐がある
・ぐったりして動かない

尿道が閉塞することで、本来排出されるはずの尿が腎臓から出ていくことができず、腎盂の拡張(いわゆる水腎症)が見られます。



←正常な腎臓 腎盂が拡張した腎臓→
(尿道閉塞の症例)

4. 動物病院で行う尿検査と、病状に合わせた治療のステップ

動物病院では、まず「尿道が閉塞しているか」を最優先で確認します。

主な検査内容

  1. 超音波検査(エコー検査): 膀胱内の結石の有無、膀胱粘膜の厚さ(炎症の度合い)、尿道の拡張があるかを確認します。
  2. 試験的なカテーテルの挿入:尿道の閉塞の有無を確認するため、外陰部からカテーテルを挿入し、膀胱まで通ずるかを確認します。膀胱まで挿入できた場合、尿検査のための採尿と、膀胱の拡張を解除するためある程度の量の尿をカテーテル下で排出させます。膀胱まで挿入できなかった(尿道閉塞)場合は、穿刺(お腹から針を刺して)によって採尿し、尿を排出させます。
  3. 尿検査: 尿のpH、結晶、潜血、細菌の有無を調べます。
  4. 血液検査: 尿道閉塞が疑われる場合、腎臓の数値(尿素窒素、クレアチニン)や電解質(Na、K、Cl)の数値を測定し、全身状態を評価します。

病状に合わせた治療法

  • 尿道閉塞の場合(緊急処置): カテーテルを挿入しながら水圧によって詰まりを膀胱に物理的に押し流す方法(逆行性尿道水圧推進法)もありますが、腎臓に直接針を刺してカテーテルを設置する方法で排尿を維持しながら、なるべく早く尿道結石を摘出する手術を行なわなければなりません。電解質の補正のため輸液は必須で、術後も炎症がおさまるまで数日間はカテーテルを留置する必要があります。
  • 膀胱結石の場合: ストルバイト結石であれば、小さいサイズであれば、専用の療法食を給餌することで数週間で結石を溶解させることが可能(Lulich et al., 2016)ですが、閉塞のリスクがつきまとうため、基本的には早めの摘出をおすすめします。しかし、シュウ酸カルシウム結石の場合は食事によって溶解させることはできないため、治療するには必ず外科的な摘出が必要です。
  • 特発性膀胱炎の場合: 痛みを和らげるための鎮痛剤や抗炎症薬を併用することもありますが、後述するような生活環境の改善(ストレスの除去)を中心に治療を行います。
よくある質問(FAQ)④
Q
人間の膀胱炎の薬を猫に飲ませても大丈夫ですか?
A
猫にとって重篤な中毒を引き起こす危険があります。

猫の代謝経路では代謝できない成分が入っていたり用量が異なり、肝機能障害や命に関わるリスクがあります。飼い主様の判断で人間の医薬品は投薬しないでください。

5. 愛猫の尿路疾患を防ぐために自宅でできる予防法

特発性膀胱炎において、多角的な環境要因の修正(MEMO)を行うことで再発率を有意に低下させることが報告されています(Buffington et al., 2006)。具体的には以下の4つを意識してみてください。

1. 飲水量を増やす工夫をする

おしっこの量を増やすことが最も理想的です。

  • 水飲み場を家の複数箇所に設置する
  • 流れる水(循環式給水器)設置する
  • 器の素材(陶器、ガラス、ステンレスなど)を猫の好みに合わせる

2. ウェットフードやサプリメントを活用する

ドライフードの水分含有量は10%程度ですが、ウェットフードは約80%が水分です。食事をウェットフードに切り替える、あるいはドライフードに少量のぬるま湯を混ぜるだけで、自然と水分摂取量を増やすことができます。

また、尿路系をケアする目的のサプリメント(例:クランベリーエキスなど)も動物病院用に何種類かあり、再発を防ぐために併用することもできます。

よくある質問(FAQ)⑤
Q
療法食を処方されましたが、いつまで続ければいいですか?
A
結石の予防用フードの場合、基本的には生涯続けることが推奨されます。

市販のフードに戻すと尿のpHや成分のバランスが悪くなり、結石が再発することがあります。

3. 理想的なトイレ環境を整備する

猫は排泄環境に強いこだわりがあるようで、トイレが気に入らないとおしっこを我慢してしまい、膀胱炎のリスクが高まります。

  • トイレの数は「猫の頭数+1個」がマスト
  • 大きさは猫の体長の1.5倍以上のゆったりしたサイズで
  • フルカバーよりはハーフカバーのトイレ
  • 排泄物はこまめに片付け、常に清潔に保つ
  • 猫砂の好みは個体差がある(砂状や小粒のものが好まれる傾向にあります)

4. ストレスのない隠れ家を用意する

見下ろせるような高い場所(キャットタワー)を用意してあげること、身を隠して安心できる狭い隠れ家、爪とぎを用意してあげることはマストです。

追加で、香水やアロマが猫の好みの香りではなかったり、来客や周囲の騒音がストレスになっていることがあります。

よくある質問(FAQ)⑥
Q
去勢手術をすると尿路結石になりやすいと聞きましたが本当ですか?
A
手術そのものが直接の原因になるわけではありませんが、間接的なリスクにはなります。

去勢・避妊手術をすると基礎代謝が落ちて太りやすくなります。肥満になると動くのが面倒になり、水を飲みに行く回数やトイレに行く回数が減るため、結果として尿が濃くなり結石ができやすくなると考えられます。

6. 獣医師からのまとめ

「おしっこが出ていない」という症状は多くの方が緊急な状態だと気づくと思われますが、「トイレでそわそわして出てこない」「おしっこしながら鳴いている」「血尿っぽい」というようなささいな症状でも、ストレスによる特発性膀胱炎や、結石といった疾患の可能性があります。特にオス猫では日頃から気をつけて見てあげるようにしてください。

流れる水を用意する、清潔なトイレを複数用意するというのはかなり効果的な予防になります。

少しでも「いつもと違う」「トイレでそわそわしている」と感じたら、早めに動物病院へご相談ください。

7. 引用文献

  • Gerber B et al. Evaluation of clinical signs and causes of lower urinary tract disease in European cats. J Small Anim Pract. 2005;46(12):571-7.
  • Lulich JP et al. ACVIM Small Animal Consensus Recommendations on the Treatment and Prevention of Uroliths in Dogs and Cats. J Vet Intern Med. 2016;30(5):1564-74.
  • Buffington CAT et al. Clinical evaluation of multimodal environmental modification (MEMO) in the management of cats with idiopathic cystitis. J Feline Med Surg. 2006;8(4):261-8.

この記事を執筆した先生は・・・

けいこくの森動物病院 獣医師 田口 仁

田口獣医師の写真1
田口獣医師の写真2
2匹のトイプードルと一緒に暮らしています

経歴

2022.9 けいこくの森動物病院 研修生として勤務
2026.3 東京大学 獣医病理学研究室 卒
2026.4 けいこくの森動物病院 獣医師として勤務

けいこくの森動物病院では、わんちゃんねこちゃんの一般診療はもちろん、歯科診療にも力を入れています。
東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で愛犬・愛猫の体調にお困りの方はご相談ください。

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