2025/06/16
こんにちは!世田谷区等々力にありますけいこくの森動物病院です🌳
ある日、ふと触れたときに気づいた、犬や猫の小さなしこり。
「年齢のせいかな」「ただの脂肪の塊かも」と思って見過ごしてしまうことは少なくありません。
でも、もしそのしこりが肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)という“がん”の一種だったら──?
肥満細胞腫は犬や猫に比較的よく見られる腫瘍のひとつで、進行の早いものもあるため、早期発見・早期治療がとても重要です。
肥満細胞腫とは?名前に惑わされないで
「肥満細胞腫」という名前を聞くと、「肥満=太っていることが関係あるの?」と思われがちですが、肥満細胞という免疫細胞が腫瘍化したものであり、体型とは無関係です。
肥満細胞は、皮膚・消化管・呼吸器など体内のあちこちに存在する細胞で、アレルギー反応や炎症の調節に関わっています。この肥満細胞が異常増殖し、腫瘍となるのが肥満細胞腫です。
- 犬では皮膚に発生するケースが多く、比較的目で見つけやすい傾向があります。
- 猫では皮膚以外に、脾臓・腸などの内臓にできることもあり、気づかれにくい場合があります。
犬と猫、それぞれの肥満細胞腫の特徴
🐶 犬に多い「皮膚のしこり」
- 発症年齢:6歳以上が中心(中〜高齢犬)
- 好発犬種:パグ、ボクサー、ラブラドール、ビーグルなど
- 見た目:小さなしこりから急速に大きくなるタイプまで幅広い
特にパグでは多発性(複数できる)の傾向もあります。
腫瘍の“性格”により、比較的おとなしいもの(低グレード)から、浸潤や転移を起こす悪性度の高いもの(高グレード)までさまざまです。
🐱 猫では「皮膚型」「内臓型」の2パターン
- 皮膚型:若齢〜高齢まで発症。多くは良性に近い。
- 内臓型(特に脾臓や腸):元気や食欲の低下、体重減少などの全身症状が出ることも
皮膚に異常がなくても体内に腫瘍が存在することがあり、健康診断で偶然見つかることもあります。
こんなしこりは要注意|肥満細胞腫の主な症状
◆ 皮膚型(犬・猫共通)
- 直径5mm〜2cm程度のやわらかく丸いしこり
- 赤み・かさぶた・ただれ・かゆみ
- 大きさや形が日によって変化
- 舐めたり掻いたりして悪化
肥満細胞はヒスタミンなどの化学物質を放出するため、炎症や腫れ、胃腸障害を引き起こすこともあります。
◆ 内臓型(主に猫)
- 食欲不振・元気消失
- 体重減少・嘔吐・下痢
- 黒っぽい便(消化管出血)
- 貧血やお腹の張り
皮膚にしこりがない場合でも、全身状態に異変が出たら注意が必要です。
肥満細胞腫の診断方法|まずは細胞診から
✅ 細胞診(細い針で細胞を採取)
もっとも基本的な検査です。
腫瘍に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で確認します。
肥満細胞は細胞内に特徴的な顆粒(つぶつぶ)を持っているため、診断精度が高く、その場である程度の見立てができることもあります。
- 痛みが少なく、麻酔も不要
- 小さなしこりでも検査可能
✅ 病理組織検査(切除後に詳細分析)
しこりを外科的に摘出した後、専門機関で組織を詳しく調べます。
- 腫瘍のグレード(悪性度)
- 切除の完全性(マージン)
- 細胞の増殖スピード
がわかり、再発のリスクや追加治療の必要性が判断できます。
✅ 画像検査(転移や内臓型の評価)
- レントゲン検査:肺転移の有無
- 超音波検査(エコー):肝臓・脾臓・腸・リンパ節などの確認
- 血液検査:全身状態や内臓機能のチェック
特に猫の内臓型肥満細胞腫では、画像検査が診断に重要な役割となります。
肥満細胞腫の治療|外科が基本、薬や放射線も選択肢に
🩺 外科手術
- もっとも効果的で基本的な治療
- 周囲に2〜3cmのマージン(安全域)を取って切除が理想
- 早期なら再発リスクを大きく下げられる
腫瘍の場所や大きさによっては切除が難しいケースもあり、その場合は薬物療法などを併用します。
💊 分子標的薬
- 肥満細胞腫の細胞増殖を抑える飲み薬
- 切除困難例や再発時の補助療法として活躍
- 犬では承認済み。猫は慎重に検討。
副作用には嘔吐・下痢・食欲不振・白血球減少などがあり、定期的なモニタリングが必要です。
🔬 放射線治療(高度医療施設)
- 外科が難しい部位(顔・四肢など)
- 手術後の残存腫瘍への対応
照射回数が必要なため、通院が可能な範囲か、犬猫の体力などを総合的に判断します。
🌿 支持療法
- 胃潰瘍予防の制酸剤やH2ブロッカー
- 下痢・嘔吐への対処
- 皮膚症状に対する外用薬など
症状緩和や生活の質(QOL)を保つために欠かせないケアです。
予後(経過)はどうなる?|治療のタイミングがカギ
肥満細胞腫の予後は、以下の要素に大きく左右されます:
- 腫瘍のグレード(悪性度)
- 完全に取りきれたか(マージン)
- 転移の有無
- 治療開始の早さ
たとえば:
- グレードⅠ・Ⅱで完全切除に成功した場合 → 数年以上再発せず元気に暮らせるケースも多い
- グレードⅢや転移ありの場合 → 複合治療で管理しながらの経過観察が必要
特に早期発見・早期治療がその後の生活の質に直結します。
最後に|「ただのしこり」と決めつけず、まずはご相談を
肥満細胞腫は、犬・猫どちらにも起こりうる“がん”の一種です。
ただし、早期に発見できれば、完治を目指せる可能性も十分にあります。
こんなしこり、気づいたら要注意:
- 大きさが変わる
- 赤くただれている
- 舐めたり気にする
- 硬さ・色・形が不規則
- 数が増えてきた
「うちの子、もしかして…」と少しでも不安を感じたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。
診察・検査は思ったよりも簡単で、痛みも少ないものがほとんどです。
早めの行動が、命を守る第一歩です。
東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で、歯でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
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けいこくの森動物病院 世田谷犬猫歯科
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