【犬・猫のしこり】もしかして「肥満細胞腫」?

こんにちは!世田谷区等々力にありますけいこくの森動物病院です🌳

ある日、ふと触れたときに気づいた、犬や猫の小さなしこり。

「年齢のせいかな」「ただの脂肪の塊かも」と思って見過ごしてしまうことは少なくありません。

でも、もしそのしこりが肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)というがんの一種だったら──

肥満細胞腫は犬や猫に比較的よく見られる腫瘍のひとつで、進行の早いものもあるため、早期発見・早期治療がとても重要です。

 

肥満細胞腫とは?名前に惑わされないで

「肥満細胞腫」という名前を聞くと、「肥満=太っていることが関係あるの?」と思われがちですが、肥満細胞という免疫細胞が腫瘍化したものであり、体型とは無関係です。

肥満細胞は、皮膚・消化管・呼吸器など体内のあちこちに存在する細胞で、アレルギー反応や炎症の調節に関わっています。この肥満細胞が異常増殖し、腫瘍となるのが肥満細胞腫です。

  • 犬では皮膚に発生するケースが多く、比較的目で見つけやすい傾向があります。
  • 猫では皮膚以外に、脾臓・腸などの内臓にできることもあり、気づかれにくい場合があります。

犬と猫、それぞれの肥満細胞腫の特徴

 🐶 犬に多い「皮膚のしこり」

  • 発症年齢:6歳以上が中心(中〜高齢犬)
  • 好発犬種:パグ、ボクサー、ラブラドール、ビーグルなど
  • 見た目:小さなしこりから急速に大きくなるタイプまで幅広い

特にパグでは多発性(複数できる)の傾向もあります。

腫瘍の性格により、比較的おとなしいもの(低グレード)から、浸潤や転移を起こす悪性度の高いもの(高グレード)までさまざまです。

 

🐱 猫では「皮膚型」「内臓型」の2パターン

  • 皮膚型:若齢〜高齢まで発症。多くは良性に近い。
  • 内臓型(特に脾臓や腸):元気や食欲の低下、体重減少などの全身症状が出ることも

皮膚に異常がなくても体内に腫瘍が存在することがあり、健康診断で偶然見つかることもあります。

 

こんなしこりは要注意|肥満細胞腫の主な症状

皮膚型(犬・猫共通)

  • 直径5mm2cm程度のやわらかく丸いしこり
  • 赤み・かさぶた・ただれ・かゆみ
  • 大きさや形が日によって変化
  • 舐めたり掻いたりして悪化

肥満細胞はヒスタミンなどの化学物質を放出するため、炎症や腫れ、胃腸障害を引き起こすこともあります。

 

内臓型(主に猫)

  • 食欲不振・元気消失
  • 体重減少・嘔吐・下痢
  • 黒っぽい便(消化管出血)
  • 貧血やお腹の張り

皮膚にしこりがない場合でも、全身状態に異変が出たら注意が必要です。

 

肥満細胞腫の診断方法|まずは細胞診から

細胞診(細い針で細胞を採取)

もっとも基本的な検査です。

腫瘍に針を刺して細胞を採取し、顕微鏡で確認します。

肥満細胞は細胞内に特徴的な顆粒(つぶつぶ)を持っているため、診断精度が高く、その場である程度の見立てができることもあります。

  • 痛みが少なく、麻酔も不要
  • 小さなしこりでも検査可能

 

病理組織検査(切除後に詳細分析)

しこりを外科的に摘出した後、専門機関で組織を詳しく調べます。

  • 腫瘍のグレード(悪性度)
  • 切除の完全性(マージン)
  • 細胞の増殖スピード

がわかり、再発のリスクや追加治療の必要性が判断できます。

 

画像検査(転移や内臓型の評価)

  • レントゲン検査:肺転移の有無
  • 超音波検査(エコー):肝臓・脾臓・腸・リンパ節などの確認
  • 血液検査:全身状態や内臓機能のチェック

特に猫の内臓型肥満細胞腫では、画像検査が診断に重要な役割となります。

 

肥満細胞腫の治療|外科が基本、薬や放射線も選択肢に

🩺 外科手術

  • もっとも効果的で基本的な治療
  • 周囲に23cmのマージン(安全域)を取って切除が理想
  • 早期なら再発リスクを大きく下げられる

 腫瘍の場所や大きさによっては切除が難しいケースもあり、その場合は薬物療法などを併用します。

 

💊 分子標的薬

  • 肥満細胞腫の細胞増殖を抑える飲み薬
  • 切除困難例や再発時の補助療法として活躍
  • 犬では承認済み。猫は慎重に検討。

副作用には嘔吐・下痢・食欲不振・白血球減少などがあり、定期的なモニタリングが必要です。

 

🔬 放射線治療(高度医療施設)

  • 外科が難しい部位(顔・四肢など)
  • 手術後の残存腫瘍への対応

照射回数が必要なため、通院が可能な範囲か、犬猫の体力などを総合的に判断します。

 

🌿 支持療法

  • 胃潰瘍予防の制酸剤やH2ブロッカー
  • 下痢・嘔吐への対処
  • 皮膚症状に対する外用薬など

症状緩和や生活の質(QOL)を保つために欠かせないケアです。

 

予後(経過)はどうなる?|治療のタイミングがカギ

肥満細胞腫の予後は、以下の要素に大きく左右されます:

  • 腫瘍のグレード(悪性度)
  • 完全に取りきれたか(マージン)
  • 転移の有無
  • 治療開始の早さ

たとえば:

  • グレードで完全切除に成功した場合 → 数年以上再発せず元気に暮らせるケースも多い
  • グレードや転移ありの場合 → 複合治療で管理しながらの経過観察が必要

特に早期発見・早期治療がその後の生活の質に直結します。

 

最後に|「ただのしこり」と決めつけず、まずはご相談を

肥満細胞腫は、犬・猫どちらにも起こりうるがんの一種です。

ただし、早期に発見できれば、完治を目指せる可能性も十分にあります。

こんなしこり、気づいたら要注意:

  • 大きさが変わる
  • 赤くただれている
  • 舐めたり気にする
  • 硬さ・色・形が不規則
  • 数が増えてきた

「うちの子、もしかして」と少しでも不安を感じたら、どうぞ遠慮なくご相談ください。

診察・検査は思ったよりも簡単で、痛みも少ないものがほとんどです。

早めの行動が、命を守る第一歩です。

 

東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で、歯でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。

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けいこくの森動物病院  世田谷犬猫歯科

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