2025/06/25
こんにちは!世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です。
今回は不正咬合の1つである、クラスⅣ不正咬合(偏位咬合)についてご紹介します!
「うちの子、片側でしかごはんを食べていない気がする」
「口を気にしているけど、痛いのかな?」
こうした仕草の裏に潜んでいる可能性があるのが、不正咬合(噛み合わせの異常)です。
特に、左右非対称に顎の長さや歯列がズレている「クラスIV不正咬合(偏位咬合)」は、見た目以上に深刻な健康被害を引き起こすことがあります。
不正咬合とは?犬猫にも「噛み合わせの問題」があります
不正咬合とは、本来正しくかみ合うべき上下の歯の位置がずれてしまっている状態です。
犬や猫では、生まれつきの骨格的な要因や、乳歯遺残などの影響で発生することがあり、以下のように分類されます。
クラス分類と特徴
〇クラスI…顎の位置は正常だが、個々の歯の位置が異常(例:異常萌出)
〇クラスⅡ…上顎が前に出ている「上顎前突、下顎短小症」
〇クラスⅢ…下顎が前に出ている「下顎前突」
〇クラスIV…左右の顎の長さが非対称な状態「偏位咬合」
この中でも「クラスIV」は左右の顎の成長バランスが崩れている状態で、片側の噛み合わせだけが異常という特徴があります。
原因
- 先天的な骨格異常
生まれつき顎の成長に左右差がある場合、骨格ごと歪みが生じます。 - 外傷や成長期の影響
成長期に強い外力(ぶつけた・落下した等)が加わることで、片側の顎の成長板が損傷し、左右差が出ることがあります。 - 乳歯遺残や早期の歯列異常
乳歯が抜けずに残っていた場合、後続の永久歯の位置がずれて咬合に影響することがあります。
症状
クラスIV不正咬合は、以下のような症状や疾患を引き起こすリスクがあります。
口腔内の慢性傷害・潰瘍
歯が本来当たるべきではない粘膜や歯肉に食い込むことで、潰瘍や炎症が慢性化します。
歯の摩耗・破折
歯同士が異常に接触し、すり減ったり折れたりします。これが原因で歯髄炎(神経の炎症)や感染を招くことも。
顎関節の異常・顔面の歪み
顎の非対称な成長が続くと、顔の歪みや関節の変形が目立つようになり、進行性の場合は外科的矯正が必要になります。
食欲不振・摂食困難
痛みや違和感から食事を避けるようになったり、片側だけで噛むことで消化不良を起こしたりします。
診断
当院では、以下の検査を組み合わせてクラスIV不正咬合の有無を評価します。
- 視診・触診:口腔内の歯列・粘膜の確認
- 頭部歯科X線(麻酔下)またはCTスキャン(紹介病院にて実施):顎骨の形態と非対称性の評価
- 咬合チェック:噛み合わせ時の歯の接触状態を細かく確認
治療の選択肢と方針
クラスIV不正咬合の治療は、「見た目」ではなく「機能と健康維持」を目的としています。
矯正治療
- 成長期であれば、矯正装置(レジン、ワイヤー、バイトプレートなど)での咬合誘導が可能です。
- 対象年齢:生後4〜9か月ごろが理想
選択的抜歯
- 軽度の咬合異常では、粘膜や他の歯に接触する1〜数本の歯を抜歯することで、生活の質を改善できます。
外科的矯正手術
- 顎骨の長さを整える手術(生活歯髄切断術)を行うこともあります。
- 全身麻酔と術後管理が必要となります。
治療後も安心できる?経過管理と再発予防
治療が完了した後も、以下の点に注意しながら定期的なフォローアップを行います。
- 咬合の再チェック(6か月〜1年ごと)
- 歯周病や歯石のチェックとケア
- 生活の質(食事の様子・痛み)の確認
特に成長期や歯の生え変わりの時期は、咬合の変化が起きやすい重要な時期です。
ご自宅で気づけるサインとは?
以下のような仕草が見られる場合は、早めの診察をおすすめします。
- 食事のときに片側でしか噛んでいない
- 口の中を前足でしきりにかく
- フードをよくこぼす/丸呑みする
- 口臭が強くなった
- 歯や歯茎に出血・変色がある
まとめ:クラスIV不正咬合は「成長を待たずに治療すべき」状態です
特に、子犬・子猫の時期に診断し、必要な治療を早期に行うことが将来的なトラブルを防ぐ鍵となります。
「成長したら自然に治るかもしれない」と様子を見る方もいらっしゃいますが、不正咬合は自然に治ることはまれで、むしろ悪化するリスクの方が高いです。
犬や猫は、言葉で痛みを訴えることができません。だからこそ、飼い主の「ちょっとした違和感」に気づくことと、獣医師の専門的な口腔チェックが重要になります。
東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で、歯でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
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けいこくの森動物病院 世田谷犬猫歯科
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