2025/06/26
こんにちは!世田谷区等々力にありますけいこくの森動物病院です🌳
今回は、子犬に見られる先天性疾患のひとつ、「血管輪異常(けっかんりんいじょう)」についてお話しします。
「離乳食を食べたあとに未消化のまま吐いてしまう」「体重が増えない」「食べることが苦手そう」…そんな症状が見られる子は、食道が圧迫されている病気の可能性があります。血管輪異常はその代表的な原因のひとつです。
血管輪異常とは?
血管輪異常とは、心臓や大動脈まわりの血管が通常と異なる位置や形で発達し、結果として食道や気管が締め付けられてしまう先天性疾患です。
中でももっとも多いのが、「右大動脈弓遺残」というタイプで、犬の血管輪異常の約95%を占めています。
この異常では、右側の大動脈弓が残ってしまい、血管の輪を形成して食道と気管を前後から締め付ける構造になります。
どんな犬に多いの?
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- アイリッシュ・セッター
- ボストン・テリア
- ラブラドール・レトリーバー
などの大型犬種に多い傾向がありますが、どの犬種でも発生はあり得ます。
多くは生後数週齢~離乳期にかけて発症し、固形食を始めたタイミングで症状が現れることが多いです。
血管輪異常の主な症状
- 離乳食や固形食を食べると未消化のまま吐き戻す(吐出)
- 水や流動食はなんとか飲めるが、固形物がダメ
- 体重が増えない、発育不良
- 長期間の吐出により誤嚥性肺炎を併発
飼い主さんからは、「流動食なら食べられるのに、ドライフードだとすぐ吐く」といった訴えが多く聞かれます。
診断方法
胸部X線検査
- 食道の前胸部(心臓の手前)がガスや食べ物で異常に拡張している様子が確認できます。
造影検査
- 造影剤を飲ませて撮影。
- 側面像では心臓の根元あたりで食道が急に細くなっている(狭窄)部分が見られます。
- 背腹像では、拡張した食道が左側に偏っていることが特徴です。
CT検査(必要に応じて)
- 血管の位置関係を詳しく評価でき、外科手術を計画する際に非常に有用です。
治療方法
外科的治療(根本的な治療法)
食道を圧迫している異常な血管(動脈索)を切除する手術が、根治を目指す唯一の治療法です。
- 一般的には左側の肋間から開胸してアプローチ
- 圧迫している血管を切離・結紮
- 必要に応じて、食道の拡張部分の整復処置(縫縮や部分切除など)
手術の適応となる例
- 重度の食道圧迫がある
- 成長不良や誤嚥のリスクが高い
- 食事管理だけでは対応できない
手術後も拡張した食道の機能回復には時間がかかる場合があり、術後も一定期間のケアが必要です。
内科的管理(軽症例や術前・術後のサポート)
- チューブフィーディング(鼻カテーテルや胃瘻)
- 立位での食事(頭を高くした状態で食べさせる)
- 流動食や缶詰など消化しやすい食事への変更
これらの方法で一時的に症状を軽減できますが、血管による圧迫が残る限り根本的な解決にはなりません。
当院での対応について
当院では、離乳期のわんちゃんに吐出が見られたり、発育が思わしくない場合には、血管輪異常を含めた食道の異常を視野に入れた診断を行っています。
必要に応じて提携の画像センターでのCT検査を依頼し、確定診断と外科的治療を行える高度医療施設をご紹介します。
術前・術後の栄養管理や誤嚥性肺炎の予防、食事指導など、長期的なケアも含めてサポートいたします。
まとめ
- 血管輪異常は、先天的な血管の位置異常によって食道や気管が締め付けられる病気です。
- もっとも多いのは「右大動脈弓遺残」で、子犬の離乳期の吐出が主なサインです。
- 診断にはX線・造影・CTなどが有用。
- 治療は外科手術が基本ですが、食事管理などの内科的対処も重要です。
「食べるとすぐ吐く」「食べているのに大きくならない」そんなサインがあれば、早めのご相談をおすすめします。
東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で、歯でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
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けいこくの森動物病院 世田谷犬猫歯科
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