犬と猫の膵炎(すいえん)とは?―命を守るために知っておきたい知識と対処法

こんにちは!

世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です🌳

今回は膵炎についてお話します。

 

「急にごはんを食べなくなった」「元気がない」「なんとなく様子がおかしい」――

そのなんとなくのサインが、【膵炎(すいえん)】の始まりかもしれません。

膵炎は犬・猫ともに比較的よく見られる疾患でありながら、見逃されやすく重症化しやすい病気です。

適切な初期対応と再発予防の知識を持つことで、愛犬・愛猫の命を守ることができます。

本記事では、動物病院の現場で数多くの膵炎症例を診てきた獣医師が、膵炎の症状、診断、治療、再発予防までを分かりやすく解説します。

膵臓の役割と膵炎の正体

膵臓(すいぞう)は胃の後方に位置する臓器で、以下の2つの重要な役割を担っています。

消化酵素の分泌(外分泌機能)

脂肪・タンパク質・炭水化物の消化を助ける酵素(リパーゼ、アミラーゼなど)を小腸に送り出します。

血糖値の調節(内分泌機能)

インスリンやグルカゴンなどのホルモンを分泌し、血糖値をコントロールします。

この膵臓が、自らの消化酵素で自己消化される状態が「膵炎」です。炎症が進行すると周囲の臓器や全身に悪影響を及ぼす可能性があり、放置すれば命にかかわることもあります。

急性膵炎と慢性膵炎

犬と猫で違う顔を持つ病気

膵炎は、発症の経過によって大きく2つに分類されます。

急性膵炎

  • 突然発症し、嘔吐・腹痛・ぐったりするなどの症状が急に現れます。
  • 犬に多く見られ、食べ物(特に高脂肪食)や薬剤、外傷が引き金となることがあります。
  • 重症の場合は全身状態が悪化し、入院治療が必要になることも。

慢性膵炎

  • 症状がはっきりしない、または繰り返すタイプ。
  • 猫に多く、「元気がない」「食欲が落ちた」程度の変化にとどまることも。
  • 進行すると膵外分泌不全や糖尿病などを併発するリスクがあります。

※とくに猫では、肝炎・腸炎を併発する「三臓器炎(トライアディティス)」の一部として慢性膵炎が存在することが多いため、多角的な診断・治療が重要です。

膵炎の原因とリスク因子

膵炎の発症メカニズムは複雑で、原因が特定できないことも少なくありませんが、以下の要因がリスクとして知られています。

高脂肪食の摂取(犬)

唐揚げやベーコンなど脂質の多い人間の食べ物は、特に犬の急性膵炎を引き起こす代表的原因です。

肥満

体脂肪が多いことで脂質代謝に異常が生じ、膵臓に負担がかかります。

薬剤の影響

一部の抗てんかん薬、利尿薬、抗生物質、抗がん剤などが膵炎を引き起こすことがあります。

基礎疾患との関連

糖尿病、胆嚢疾患、炎症性腸疾患などの持病がある動物は、膵炎のリスクが高まります。

 犬種・年齢

ミニチュア・シュナウザーやヨークシャー・テリアなど、脂質代謝に関連する遺伝的素因をもつ犬種に多くみられます。

中高齢になるほど発症率が上がります。

飼い主が気づける主な症状

膵炎は進行性の疾患でありながら、初期症状がわかりにくいため、飼い主の「違和感」に基づいた早期受診が鍵となります。

犬に多い症状

  • 急な嘔吐・下痢
  • 食欲不振、元気消失
  • 明らかな腹痛(前足を伸ばし、腰を上げる「祈りのポーズ」)
  • 発熱、震え
  • 脱水、ぐったりする

猫に多い症状

  • 食欲の低下
  • 何となく動かない・じっとしている
  • 被毛のツヤが悪くなる
  • 嘔吐は少ないが、体重が徐々に減少することも

※猫の症状は非常に非特異的で、「老化かな?」と見過ごされやすいため注意が必要です。

膵炎の診断方法

膵炎の診断は、症状だけで判断することが難しく、複数の検査を組み合わせる必要があります。

血液検査

膵特異的リパーゼ(cPL / fPL)の測定は、現在もっとも信頼性の高い血液検査です。

加えて、炎症反応(CRP)、白血球数、肝酵素、電解質バランスなども評価します。

画像診断(超音波検査)

膵臓の腫大、周囲の脂肪組織の変化、腹水の有無などがわかります。

レントゲン検査

膵臓自体は映りませんが、誤食や腫瘍など他の病気との鑑別に役立ちます。

CT・内視鏡などの精密検査

必要に応じて行われることもあります。

慢性症例や合併症の疑いがある場合に選択されます。

治療方法と回復の見通し

膵炎の治療は、「膵臓を休ませる」ことと「全身状態の改善」が基本です。

原因を取り除く治療よりも、支持療法が中心になります。

輸液(点滴)治療

脱水や電解質異常の補正、血流の改善を目的に静脈点滴を行います。入院が必要になることも多いです。

制吐剤・鎮痛剤の使用

症状を和らげ、動物の苦痛を軽減するために投与します。

抗菌薬の使用

細菌感染のリスクがある場合に限り、慎重に使用されます。

 食事療法

食欲が戻れば、消化の良い低脂肪食に切り替えます。

猫で食欲が戻らない場合は、食道チューブを用いた栄養管理も検討されます。

再発予防のためにできること

膵炎は一度治っても、再発することが珍しくありません。

慢性化を防ぐため、飼い主のサポートが重要です。

  • 人間の食べ物を与えない(特に脂っこいもの)
  • 低脂肪で消化の良いフードへの切り替え
  • 適切な体重管理と肥満予防
  • 持病(糖尿病・胆泥症など)の治療継続
  • 定期的な血液検査と超音波検査

※療法食の継続と、再発の兆候に早期に気づく意識が再発防止に直結します。

まとめ飼い主の「違和感」が命を救うことも

膵炎は、命にかかわる重篤な疾患でありながら、「なんとなく元気がない」「少し食欲が落ちた」だけで見逃されやすい病気です。

しかし、早期に診断し適切な治療と生活管理を行えば、多くの犬猫が回復し、普段通りの生活を取り戻すことができます。

「少しでも気になるな」と思ったら、どうか迷わず動物病院にご相談ください。

 

東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で、歯でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。


。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。

けいこくの森動物病院  世田谷犬猫歯科

〒158-0082

東京都世田谷区等々力1-34-18

シュロス等々力1F

TEL:03-3704-1014

。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。