2025/07/04
こんにちは!世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です。🌳
今回は、猫にとってとても身近でありながら、見過ごされやすい歯の病気「1型歯牙吸収(しがきゅうしゅう)」についてご紹介します。
猫が「ごはんを食べづらそうにしている」「口を触られるのを嫌がる」「よだれが増えた」などの症状を見せたら、それは単なる歯石や歯周病だけではなく、歯が“溶けている”可能性もあります。
この病気は放っておくと、痛みや感染、食事の拒否など、猫の生活の質に大きな影響を与える恐れがあります。ぜひ一度、最後までお読みください。
歯牙吸収とは?
歯牙吸収とは、歯が体の中の細胞によって壊されていく現象を指します。人間にはほとんど見られませんが、猫には非常に多い病気の一つです。
歯の表面のエナメル質やその内側の象牙質が少しずつ破壊されていき、やがて歯が欠けたり、折れたりします。歯が“虫歯”のように見えるため、「虫歯ですか?」と質問されることもありますが、虫歯とは異なるメカニズムで進行する非感染性の病変です。
「1型」と「2型」…なにが違うの?
歯牙吸収には主に1型と2型の2種類があります。今回はその中でも特に注意が必要な「1型」に焦点を当てて説明します。
種類 | 特徴 |
レントゲン画像 |
主な原因 |
1型 |
歯の根の周りの炎症が主因とされる |
歯根膜がはっきりと見える |
歯周病などによる慢性炎症 |
2型 |
原因不明で体が自分の歯を骨に置き換えてしまう |
歯根がぼやけて骨と一体化 |
加齢との関係が示唆される |
1型は特に炎症によって歯の一部が壊される病態で、治療の方針も異なります。
1型歯牙吸収の原因と進行の仕方
まだはっきりした原因は分かっていませんが、歯の根元に炎症が起きることで、破歯細胞という細胞が活性化し、歯を少しずつ溶かしていくことがわかっています。
特に歯の「歯頚部」という歯ぐきの下に隠れた部分が影響を受けやすく、初期の段階では見た目での判断が非常に難しい病気です。
症状が進むと、歯の一部が欠けたり、折れたりして、痛みや違和感が生じます。炎症が進行すれば、口臭やよだれ、食欲の低下、元気消失といった症状が見られることもあります。
鑑別と診断にはレントゲンが必須
この病気は、見た目では2型と区別がつかないため、必ず歯科用のX線検査が必要です。レントゲンで「歯根膜(しこんまく)」という歯と骨をつなぐ線が確認できる場合は1型、逆に消失して骨と一体化している場合は2型と診断します。
特に、歯が突然なくなっている、歯ぐきが赤く腫れているなどの所見がある場合、早急にX線検査を受けることをおすすめします。
1型歯牙吸収の治療法は「完全な抜歯」
1型の歯牙吸収病変は自然に治ることはありません。また、放置しておくと痛みや感染が慢性化し、猫にとって大きなストレスになります。
現在、もっとも効果的で確実な治療法は「完全な抜歯」です。歯の根っこがまだ骨に置き換わっていないため、すべての歯根を残さず丁寧に取り除く必要があります。
抜歯後は痛みがなくなり、多くの猫が食欲や元気を取り戻すことが期待できます。
こんなサインがあったら要注意!
以下のような行動がみられる場合、歯牙吸収を含めた歯のトラブルがあるかもしれません:
- ごはんを食べるときに顔を傾ける
- カリカリを嫌がるようになった
- よだれが多い・口をくちゃくちゃする
- 口を触られるのを極端に嫌がる
- 口臭がきつい
- 以前より元気がない・寝てばかりいる
どれも“年齢のせい”と片付けてしまいがちな変化ですが、歯の痛みや病気のサインかもしれません。
定期的な歯科検診で守れる未来
1型歯牙吸収は初期症状に乏しく、発見が遅れがちな病気です。そのため、症状が出る前に定期的な口腔内検診とレントゲン撮影を行うことで、早期発見・早期治療が可能になります。
猫の健康は、毎日の食事やお口の健康から。見た目ではわかりづらい歯の異常こそ、プロの視点でのチェックが重要です。
まとめ
- 1型歯牙吸収は、炎症をきっかけに歯が壊れていく猫特有の病気です
- 見た目での判断が難しく、X線撮影による診断が必須
- 最も効果的な治療は「完全な抜歯」
- 痛みや不快感が解消され、猫の生活の質が大きく改善されます
東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。
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けいこくの森動物病院 世田谷犬猫歯科
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