2025/07/20
こんにちは!けいこくの森動物病院です🌳
「最近、うちの子の口がとても臭う」
「口元を触ると嫌がるようになった」
「ごはんは好きなのに食べにくそうにしている」
そんな変化、見逃していませんか?
それは「慢性潰瘍性歯周口内炎(まんせいかいようせいししゅうこうないえん)」という、非常に痛みを伴う免疫性の病気かもしれません。
この疾患は進行性かつ慢性的な炎症が続く厄介な病気で、見た目では分からなくても、わんちゃんが強い苦痛を感じていることがあります。
今回はこの疾患について詳しくご説明します。
慢性潰瘍性歯周口内炎とは?
この病気は、犬の口の中の粘膜に持続的な炎症や潰瘍が生じる状態です。
特に歯ぐきや頬の内側の粘膜にひどい赤み、腫れ、ただれがみられ、ひどくなると出血や白い膿のような浸出物が確認されることもあります。
名前は難しく感じますが、要するに「歯周病に近い状態が、免疫の異常によって過剰に進行してしまう病気」だと考えてください。
なぜ起こるの?
この病気の大きな原因は、歯垢(プラーク)に含まれる細菌に対する“免疫の過剰反応”です。
通常、口の中に多少の細菌がいても問題ありません。しかしこの病気の犬では、体の免疫システムが自分の体を守るべきはずの歯垢に対して強く反応してしまい、粘膜に炎症や潰瘍が起こるのです。
特に白色犬種(マルチーズ、キャバリアなど)に多く見られ、中年齢以降、雌にやや多い傾向があります。
どんな症状が出るの?
以下のような症状が見られる場合、慢性潰瘍性歯周口内炎の可能性があります:
- 口臭がひどくなる
- ごはんは欲しがるが、口に入れたあと食べづらそうにする
- 歯磨きを嫌がる・口を触られるのを極端に嫌う
- よだれが多くなった、血が混じる
- 口の周りをかく、物にこすりつける
- 口の中が真っ赤、白い膿がある
- 口の中からクリーム状の分泌物(膿)が見える
炎症が進むと、頬の内側や舌の側面にびらん(ただれ)や潰瘍が広がり、口全体が痛みに満ちた状態になります。
これにより犬が食べること自体を拒否するようになるケースも少なくありません。
検査と診断は?
まずは一般的な健康状態を確認するために、血液検査・尿検査を行います。
本疾患では、総タンパクの上昇や多様な免疫グロブリンの増加(高グロブリン血症)が見られることがあり、免疫異常の存在を示します。
加えて、口腔内の詳しい視診、レントゲン検査、病理検査を組み合わせることで、似た症状を示す他の病気(口腔内の腫瘍、真菌感染、免疫疾患など)との鑑別を行います。
多くの子は口の中がとても痛いため、全身麻酔下での診察が必要となる場合も多いです。
治療法はあるの?
慢性潰瘍性歯周口内炎の治療は長期戦であり、根気と継続的なケアが不可欠です。以下のような方法を組み合わせて治療します。
【1】徹底した歯垢・歯石除去(スケーリング)
この病気の“根本的な引き金”は歯垢なので、最も重要なのは口腔内の徹底的な清掃です。全身麻酔下で歯石除去と洗浄を行い、可能な限り炎症の元を減らします。
【2】ホームケア(歯磨き)
治療後も、毎日の歯磨きでのケアが欠かせません。毎日の歯磨きを習慣づけるようにしましょう。
【3】薬物療法(抗生剤・ステロイド)
細菌感染と免疫反応の両方に対応するため、抗生物質と抗炎症薬を併用することがあります。
ただし、ステロイドには副作用があるため、長期使用には定期的な血液・尿検査が必要です。
副作用が出た場合には免疫抑制剤への切り替えを検討します。
【4】抜歯
聞こえはショッキングかもしれませんが、重度の場合、抜歯がもっとも確実かつ有効な治療となることがあります。
特に歯肉の後退が進行し、痛みがひどい歯は抜いてあげることで、症状の改善が期待できます。
さらに、すべての歯を抜く「全抜歯」が必要になることもありますが、実際にはこれで生活の質が劇的に改善されるケースも多く、飼い主様からは「子犬のように元気になった」という声も聞かれます。
再発を防ぐには?
この病気は非常に再発しやすいという特徴があります。
そのため、治療して終わりではなく、以下のような継続的ケアが不可欠です。
- 自宅での毎日のデンタルケア
- 歯周病ケアフードの使用
- 年に数回の定期的なスケーリング
- 症状の再燃時の迅速な対応
まとめ
- 慢性潰瘍性歯周口内炎は、免疫異常が関与した非常に痛みの強い口腔疾患です
- 歯垢中の細菌に対する過剰な反応が主な原因
- 徹底した歯垢除去とホームケアが治療の要
- 改善がみられない場合は抜歯が最も有効な選択肢となることも
- 治療には時間と根気、飼い主様の協力が不可欠です
こんなときはご相談ください
- 口臭が気になる
- 歯を磨かせてくれない
- 食べづらそう、痛がる
- 頬の内側に赤みやただれがある
- 歯ぐきが後退している気がする
わんちゃんの「いつものことかな?」と思える小さなサインが、実は強い痛みや不快感のSOSかもしれません。
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