2025/07/21
こんにちは!けいこくの森どうぶつ病院です🌳
「うちの子の体を撫でていたら、しこりのようなものがあって心配……」
そんなご相談を飼い主さまからいただくことがあります。その中で、比較的よく見られるもののひとつが「脂肪腫(しぼうしゅ)」です。
脂肪腫は基本的に良性の腫瘍で、すぐに命に関わることは少ないですが、中には他の腫瘍と見分けがつきにくいものもあり、自己判断は禁物です。
今回は、そんな脂肪腫についてお話したいと思います!
脂肪腫とは?
脂肪腫とは、皮下や筋肉層に発生する脂肪細胞由来の良性腫瘍です。
実際はどこの臓器にも発生し得る腫瘍ですが、内部組織に発生することはまれで皮下などの目に見える位置にできることで発覚することが多い腫瘍です。
見た目には「しこり」や「ふくらみ」として発見されることが多く、高齢の犬に比較的よく見られる腫瘍のひとつです。
脂肪腫は多くの場合、ゆっくりと大きくなり、周囲の組織に浸潤しない(転移しない)という特徴があります。
つまり、「すぐに命に関わる悪性腫瘍」ではないことがほとんどです。
ただし、放置しているとサイズが大きくなって日常生活に支障をきたすことや、見た目では見分けがつかない悪性の脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)との鑑別が必要なため、油断はできません。
脂肪腫の症状
脂肪腫の症状は、基本的に無症状です。
飼い主さまがふと触ったときに「なんだか柔らかいしこりがある……」と気づくことが多いです。
主な特徴
- 皮膚の下にふわふわしたしこりがある
- しこりを触っても痛がらない
- 皮膚との癒着が少なく、動かすことができる
- サイズが徐々に大きくなる
- 体調の変化は見られないことが多い
ただし、大きさ・場所・個体差によっては以下のような問題が起きることもあります
- 関節付近や脇の下にできて歩きづらくなる
- 圧迫により血流が悪くなる
- 非常に大きくなって外科手術が難しくなる
↑大きくなり過ぎた脂肪腫は歩行の妨げにもなります…
犬・猫での脂肪腫の違い
犬の場合
- 体幹部、脇腹、太ももなどに発生しやすい
- 多発性(複数できる)脂肪腫の犬もいます
猫の場合
- 猫には脂肪腫は比較的まれ
- しこりがあった場合は他の腫瘍や炎症性病変の可能性もあるため、特に慎重な診断が必要です
- 脂肪腫の可能性が低い為、しこりを切除し病理検査にて確定診断を行うことが多いです
脂肪腫の原因は?
脂肪腫の原因は、はっきりとは分かっていません。
ただし、以下の要因が関係している可能性があると考えられています。
- 加齢による細胞の変化
- 遺伝的要素
- 肥満(ただし太っていない子にも発生します)
- 慢性的な摩擦や圧迫
診断方法
脂肪腫の診断には、以下のような検査が行われます。
視診・触診
- 柔らかく、境界がはっきりしていて動かせるしこりは脂肪腫の特徴ですが、見た目や触った感触だけでは確実な診断はできません。
細胞診(針吸引検査)
- 細い針でしこりの細胞を少量採取し、顕微鏡で観察します
病理検査(外科的に切除して検査)
- より確定的な診断が必要な場合や、悪性の可能性を除外したい場合は、組織を手術で一部または全部切除し、病理検査を行います
画像診断(超音波・CT・MRI)
- 脂肪腫が筋肉層に入り込んでいる場合や、巨大化している場合は、より正確な範囲を把握するために画像検査が役立ちます
治療方法
脂肪腫自体は良性腫瘍であり、小さくて問題がなければ経過観察を選ぶこともあります。
しかし、以下のような場合は外科的切除が推奨されます。
- 徐々に大きくなっている
- 歩行・運動・日常生活に支障が出ている
- 急に大きくなった(悪性の可能性を考慮)
- 飼い主さまが不安を強く感じている
- 針吸引で診断がつかなかった or 異型細胞が見つかった
脂肪腫の切除は、しっかりと周囲の組織と分けて取り出す必要があり、筋肉層に入り込んだ場合はやや難しい手術になることもあります。
脂肪腫と間違えやすい病気として脂肪肉腫、皮膚組織球種、肥満細胞腫、膿瘍(うみ)など、様々な病気があげられるため注意が必要です。
まとめ:脂肪腫は命に関わらない?→正しく診断することが第一歩!
脂肪腫は犬にとって最もよく見られる良性腫瘍のひとつですが、
「見た目で良性に見えても、実は悪性腫瘍だった」というケースも珍しくありません。
- しこりの大きさや場所
- 成長のスピード
- 他の病気との区別がつきにくい場合
これらを判断するには、獣医師による診断が不可欠です。
「もう高齢だし、手術はかわいそう……」と思われる方もいらっしゃいますが、放置して大きくなってからの手術の方が体への負担が大きくなることもあります。
大切なご家族の健康を守るためにも、気になる症状があればお早めにご相談ください。
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