2025/09/29
こんにちは!世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です。
犬の消化器トラブルの中でも「便に血が混じる」「便の回数が増える」などの症状は飼い主さんを心配させる代表的なものです。その原因のひとつに 炎症性結腸ポリープ があります。特にミニチュアダックスフンドに多く見られる病気で、放っておくと便通の異常が続いたり、貧血や体調不良につながることもあります。今回は、この炎症性結腸ポリープについて、原因から症状、診断、治療まで解説します。
炎症性結腸ポリープとは?
「ポリープ」というと、人間の大腸ポリープをイメージされる方も多いと思います。犬に見られる炎症性結腸ポリープは、結腸や直腸の粘膜が 慢性的な炎症によって盛り上がった病変 を指します。
腫瘍性(がんや腺腫)とは異なり、基本的には炎症性の変化ですが、繰り返し発生したり、慢性的に便のトラブルを引き起こすため、犬の生活の質に大きく影響します。
好発犬種と年齢
炎症性結腸ポリープは ミニチュアダックスフンド に圧倒的に多い病気です。国内の報告では、ほとんどがダックスで占められています。
発症年齢は中高齢(6〜10歳前後)に多い傾向があります。他の犬種でも見られることはありますが、非常にまれです。
炎症性結腸ポリープの原因
正確な原因は解明されていませんが、以下のような要因が関与していると考えられています。
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遺伝的素因:ダックスに集中して発症することから、品種特異的な遺伝的背景が推測されています。
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慢性炎症:大腸炎などが繰り返されることで粘膜が盛り上がり、ポリープが形成されます。
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免疫異常:腸管の免疫応答が過剰に働き、炎症が持続することが関与している可能性があります。
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腸内環境の乱れ:腸内細菌のバランスが崩れることも一因とされています。
主な症状
炎症性結腸ポリープでは、次のような症状が見られます。
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血便:鮮やかな赤い血が便に混じる、便の表面に付着する
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粘液便:ゼリー状の粘液が便に絡む
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頻便(排便回数の増加):少量ずつ何度も排便しようとする
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排便困難やいきみ:ポリープが大きくなると便の通過が妨げられる
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体重減少や元気消失:重度になると全身状態にも影響
飼い主さんが「うちの子、トイレの回数が増えて血が混じる」と来院され、検査でこの病気が見つかることが多いです。
診断方法
動物病院では以下の流れで診断が進みます。
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問診・身体検査
排便の様子や便の状態を詳しく伺います。肛門から指を入れる直腸検査で、ポリープが触れることもあります。 -
画像検査
レントゲンや超音波では直接的に写りにくいため、主に排便の異常の程度を把握します。 -
内視鏡検査
炎症性結腸ポリープの診断に最も有効です。カメラで結腸や直腸を観察し、ポリープの形や数、大きさを確認できます。 -
組織検査(生検)
内視鏡で採取した組織を病理検査に出し、炎症性であることを確認します。腫瘍との区別に必須です。
治療法
炎症性結腸ポリープの治療は、症例ごとに次の方法を組み合わせて行います。
1. 外科的切除
ポリープが単発で、切除が可能な場合は外科手術で取り除きます。特に大きなものや便の通過を妨げている場合に有効です。ただし再発する可能性もあります。
2. 内視鏡的切除
内視鏡でポリープを切除する方法です。開腹せずに済むため、体への負担が少ないのがメリットですが、再発率はやや高めです。
3. 薬物療法
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免疫抑制剤:炎症の背景に免疫異常が関与しているため有効な場合があります。
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抗炎症薬:ステロイドが使われることもあります。
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抗生物質:腸内細菌の異常増殖が関与している場合に併用されることがあります。
4. 食事療法
消化管に優しいフードや食物アレルギー対応食を使うことで、炎症の再燃を抑えるサポートとなります。
予後と再発について
炎症性結腸ポリープは良性の病変なので、適切に治療すれば命にかかわる病気ではありません。しかし 再発しやすい のが大きな特徴です。特にダックスでは、治療後数か月〜数年で再びポリープができることが多く、長期的な管理が必要です。
再発を繰り返すことで便通の異常や出血が慢性化し、犬も飼い主さんも大きな負担を抱えることになります。したがって、治療だけでなく 定期的な検診と早期発見 がとても大切です。
飼い主さんにできること
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便の状態を毎日観察する(血や粘液、回数の変化に注意)
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食欲や元気の有無をチェックする
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便に異常が続くときは早めに動物病院を受診する
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投薬や食事療法を継続する
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定期的に検査を受け、再発を早期に見つける
まとめ
炎症性結腸ポリープは、特にミニチュアダックスに多い消化器疾患で、血便や粘液便、頻便などを引き起こします。腫瘍とは異なり良性ですが、再発を繰り返す厄介な病気です。
治療には手術や内視鏡切除、薬物療法があり、再発防止のために長期的な管理が欠かせません。
「最近うちの子が血便をしている」「便の回数が多い」といったサインに気づいたら、早めに動物病院での検査を受けることが大切です
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