2025/10/20
こんにちは!世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です🌳
犬や猫の「長引く下痢」…もしかして抗菌薬反応性腸症かも?
「フードを変えてもなかなかお腹が安定しない」
「下痢が続くけど元気はあるから、様子を見ている」
そんな子に隠れていることがあるのが、抗菌薬反応性腸症です。
これは、抗菌薬(抗生物質)に反応して症状が改善するタイプの慢性腸疾患のことで、かつては「小腸性細菌過剰増殖(SIBO)」と呼ばれていました。
犬では比較的よく見られる病気で、特に若齢〜中年の小型犬に多く報告されています。
今回は、この抗菌薬反応性腸症についてご紹介します!
抗菌薬反応性腸症とは
健康な犬や猫の腸内には、消化や免疫を助けるための多様な腸内細菌(腸内フローラ)がバランスを取りながら存在しています。
しかし、何らかのきっかけでこのバランスが崩れると、特定の細菌が過剰に増えたり、炎症を起こしたりすることがあります。
その結果、腸の粘膜が刺激されて炎症が続き、慢性的な下痢や軟便が起こるようになります。
このような状態が、抗菌薬を使うことで一時的に正常化し、症状が改善するのが抗菌薬反応性腸症です。
原因と仕組み
発症の背景には、いくつかの要因が関わっていると考えられています。
- 腸内フローラの乱れ
食事やストレス、感染などをきっかけに腸内細菌のバランスが崩れることで、腸の環境が悪化します。 - 腸の防御機能の低下
腸粘膜のバリア機能が弱まると、細菌や毒素が腸壁を刺激し、炎症を引き起こします。 - 免疫の過剰反応
本来守るべき腸内細菌に対して、体の免疫が過剰に反応してしまうこともあります。
このように、「細菌の増殖」「防御力の低下」「免疫のアンバランス」が重なり合って起こるのが抗菌薬反応性腸症です。
主な症状
この病気の特徴は、長期間にわたる消化器症状です。
- 3週間以上続く下痢や軟便
- 便のにおいが強くなる、または脂っぽい便
- お腹がゴロゴロ鳴る、ガスが多い
- 食欲のムラや体重減少
- 元気はあるけれど、便の状態だけがずっと悪い
特に「元気・食欲はあるのに、便だけが不安定」という場合は、見過ごしてしまうこともあります。
放置すると慢性炎症が進み、吸収不良や栄養不良を招くこともあるため、早めの相談が大切です。
診断の流れ
抗菌薬反応性腸症の診断は、「他の病気を除外した上で、抗菌薬への反応を確認する」ことで行われます。
一般検査
まずは、慢性下痢を引き起こす他の原因を調べます。
- 糞便検査(寄生虫や細菌感染の確認)
- 血液検査(炎症や栄養状態、たんぱく質の低下など)
- 超音波検査(腸壁の厚みやリンパ節の状態を確認)
食事反応性腸症との区別
慢性下痢の中には、療法食(低脂肪食など)で改善するタイプもあります。
まずは食事療法を試し、それでも改善しない場合に抗菌薬治療を検討します。
抗菌薬の試験的投与
診断の最終ステップとして、抗菌薬を一定期間投与します。
1〜3週間程度使用し、便の状態が改善した場合に「抗菌薬反応性腸症」と診断することがあります。
治療と管理
抗菌薬治療
抗菌薬によって腸内フローラの異常が整えられ、炎症が鎮まることで症状が改善します。
ただし、長期間の使用は耐性菌や腸内環境の悪化を招くため、獣医師の指示のもとで必要最小限の期間で実施します。
食事療法
症状が落ち着いた後も、腸を守るために消化にやさしい療法食を継続します。
- 消化吸収の良いフード
- プレバイオティクス(腸内善玉菌の栄養源)を含む食事
- アレルゲンを抑えた加水分解食
これにより、再発リスクを下げることができます。
プロバイオティクスの併用
最近の研究では、抗菌薬とプロバイオティクス(乳酸菌など)を併用することで、腸内環境の回復が早まると報告されています。
場合によっては、サプリメントを併用するケースもあります。
再発と予後
抗菌薬反応性腸症は、治療への反応が良い病気ですが、再発することもあります。
特に抗菌薬をやめてしばらくしてから再び下痢が出る場合は、より深いレベルの炎症性腸疾患が隠れていることもあります。
再発を防ぐためには、
- 定期的な健康チェック
- 食事の継続管理
- ストレスの少ない生活
が大切です。
多くのケースでは、早期発見・早期治療によって元気な生活を取り戻せます。
ご家庭で注意することは?
- 2〜3週間以上続く下痢や軟便は、「よくあること」ではありません。
- 抗菌薬を自己判断で与えるのは危険です。
- 治療で改善しても、食事や腸のケアを続けることが再発防止につながります。
「お腹の調子が悪いけど、元気はあるから様子を見ている」――そんなときこそ、早めの診察が一番の近道です。
まとめ
抗菌薬反応性腸症は、慢性的な下痢や軟便の原因として比較的よくみられる病気です。
抗菌薬治療で改善が見られる一方、再発を防ぐためには食事管理や腸内環境のケアが欠かせません。
長引く便の不調や消化トラブルがある場合は、早めにご相談ください。
早期に対応することで、わんちゃん・ねこちゃんの腸を守り、健やかな毎日を取り戻すことができます。
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