長期的な嘔吐・下痢や食欲も落ちてきている…抗菌薬反応性腸症が隠れているかも?

  • HOME
  • ブログ
  • 長期的な嘔吐・下痢や食欲も落ちてきている…抗菌薬反応性腸症が隠れているかも?

    こんにちは!世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です🌳

     

    犬や猫の「長引く下痢」…もしかして抗菌薬反応性腸症かも?

    フードを変えてもなかなかお腹が安定しない

    下痢が続くけど元気はあるから、様子を見ている

    そんな子に隠れていることがあるのが、抗菌薬反応性腸症です。

    これは、抗菌薬(抗生物質)に反応して症状が改善するタイプの慢性腸疾患のことで、かつては「小腸性細菌過剰増殖(SIBO)」と呼ばれていました。

    犬では比較的よく見られる病気で、特に若齢〜中年の小型犬に多く報告されています。

    今回は、この抗菌薬反応性腸症についてご紹介します!

     

    抗菌薬反応性腸症とは

    健康な犬や猫の腸内には、消化や免疫を助けるための多様な腸内細菌(腸内フローラ)がバランスを取りながら存在しています。

    しかし、何らかのきっかけでこのバランスが崩れると、特定の細菌が過剰に増えたり炎症を起こしたりすることがあります。

    その結果、腸の粘膜が刺激されて炎症が続き、慢性的な下痢軟便が起こるようになります。

    このような状態が、抗菌薬を使うことで一時的に正常化し、症状が改善するのが抗菌薬反応性腸症です。

     

     

    原因と仕組み

    発症の背景には、いくつかの要因が関わっていると考えられています。

    • 腸内フローラの乱れ
      食事ストレス感染などをきっかけに腸内細菌のバランスが崩れることで、腸の環境が悪化します。
    • 腸の防御機能の低下
      腸粘膜のバリア機能が弱まると、細菌や毒素が腸壁を刺激し、炎症を引き起こします。
    • 免疫の過剰反応
      本来守るべき腸内細菌に対して、体の免疫が過剰に反応してしまうこともあります。

    このように、「細菌の増殖」「防御力の低下」「免疫のアンバランス」が重なり合って起こるのが抗菌薬反応性腸症です。

     

     

    主な症状

    この病気の特徴は、長期間にわたる消化器症状です。

    • 3週間以上続く下痢軟便
    • 便のにおいが強くなる、または脂っぽい便
    • お腹がゴロゴロ鳴るガスが多い
    • 食欲のムラ体重減少
    • 元気はあるけれど、便の状態だけがずっと悪い

    特に「元気・食欲はあるのに、便だけが不安定」という場合は、見過ごしてしまうこともあります。

    放置すると慢性炎症が進み、吸収不良栄養不良を招くこともあるため、早めの相談が大切です。

     

     

    診断の流れ

    抗菌薬反応性腸症の診断は、「他の病気を除外した上で、抗菌薬への反応を確認する」ことで行われます。

    一般検査

    まずは、慢性下痢を引き起こす他の原因を調べます。

    • 糞便検査(寄生虫や細菌感染の確認)
    • 血液検査(炎症や栄養状態、たんぱく質の低下など)
    • 超音波検査(腸壁の厚みやリンパ節の状態を確認)

    食事反応性腸症との区別

    慢性下痢の中には、療法食(低脂肪食など)で改善するタイプもあります。

    まずは食事療法を試し、それでも改善しない場合に抗菌薬治療を検討します。

    抗菌薬の試験的投与

    診断の最終ステップとして、抗菌薬を一定期間投与します。

    1〜3週間程度使用し、便の状態が改善した場合に「抗菌薬反応性腸症」と診断することがあります。

     

     

    治療と管理

    抗菌薬治療

    抗菌薬によって腸内フローラの異常が整えられ、炎症が鎮まることで症状が改善します。

    ただし、長期間の使用は耐性菌や腸内環境の悪化を招くため、獣医師の指示のもとで必要最小限の期間で実施します。

    食事療法

    症状が落ち着いた後も、腸を守るために消化にやさしい療法食を継続します。

    • 消化吸収の良いフード
    • プレバイオティクス(腸内善玉菌の栄養源)を含む食事
    • アレルゲンを抑えた加水分解食

    これにより、再発リスクを下げることができます。

    プロバイオティクスの併用

    最近の研究では、抗菌薬とプロバイオティクス(乳酸菌など)を併用することで、腸内環境の回復が早まると報告されています。

    場合によっては、サプリメントを併用するケースもあります。

     

     

    再発と予後

    抗菌薬反応性腸症は、治療への反応が良い病気ですが、再発することもあります。

    特に抗菌薬をやめてしばらくしてから再び下痢が出る場合は、より深いレベルの炎症性腸疾患が隠れていることもあります。

    再発を防ぐためには、

    • 定期的な健康チェック
    • 食事の継続管理
    • ストレスの少ない生活
      が大切です。

    多くのケースでは、早期発見・早期治療によって元気な生活を取り戻せます。

     

     

    ご家庭で注意することは?

    • 2〜3週間以上続く下痢軟便は、「よくあること」ではありません。
    • 抗菌薬を自己判断で与えるのは危険です。
    • 治療で改善しても、食事腸のケアを続けることが再発防止につながります。

    お腹の調子が悪いけど、元気はあるから様子を見ている」――そんなときこそ、早めの診察が一番の近道です。

     

     

    まとめ

    抗菌薬反応性腸症は、慢性的な下痢軟便の原因として比較的よくみられる病気です。

    抗菌薬治療で改善が見られる一方、再発を防ぐためには食事管理腸内環境のケアが欠かせません。

    長引く便の不調消化トラブルがある場合は、早めにご相談ください。

    早期に対応することで、わんちゃん・ねこちゃんの腸を守り、健やかな毎日を取り戻すことができます。

     

     

    【関連する記事はこちらから】

    長引く下痢…フードのせい?|食事反応性腸症について

    食欲不振や下痢が長引く犬に多い病気:炎症性腸疾患

     

    東京都世田谷区、等々力、玉川、上野毛、尾山台、自由が丘、田園調布で、歯でお困りの方は、いつでもお気軽にご相談ください。


    。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。

    けいこくの森動物病院  世田谷犬猫歯科

    〒158-0082

    東京都世田谷区等々力1-34-18

    シュロス等々力1F

    TEL:03-3704-1014

    。・゚・。。・゚・。。・゚・。。・゚・。・゚・。