2025/08/18
こんにちは!世田谷区のけいこくの森動物病院です。
犬と暮らしていると、「最近なんだか動きが鈍い」「お散歩を嫌がるようになった」「階段を上がりたがらない」といった変化に気づくことがあります。これらは年齢のせいと思われがちですが、その裏に変形性関節症(へんけいせいかんせつしょう:Osteoarthritis, OA)という病気が隠れていることがあります。
今回は、犬の変形性関節症について、原因や症状、診断方法、治療、日常生活での工夫までわかりやすくご紹介します。
変形性関節症とは?
変形性関節症とは、関節の軟骨がすり減ったり損傷したりすることで炎症が起こり、関節の形が変わってしまう慢性の病気です。軟骨は関節のクッションの役割を果たしていますが、加齢や外傷、過度な負担により軟骨が傷むと、骨同士がこすれ合って炎症や痛みを引き起こします。
進行すると関節が変形し、可動域が狭くなり、犬の生活の質(QOL)が大きく低下してしまいます。残念ながら「完全に治す」ことは難しい病気ですが、早期発見と適切なケアで進行を遅らせ、痛みを軽減することができます。
好発部位
犬の変形性関節症は、体のどの関節でも起こり得ますが、特に以下の関節で多く見られます。
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肘関節
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股関節
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膝関節
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脊椎の関節
特に大型犬では股関節や肘関節に多く、小型犬では膝関節に関わるケースが目立ちます。
犬の変形性関節症の原因
原因はひとつではなく、さまざまな要因が関わっています。
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加齢
年を重ねると軟骨の再生能力が低下し、少しずつ関節のすり減りが進行します。 -
体重過多(肥満)
体重が重いと関節にかかる負担が大きくなり、関節の消耗が早まります。 -
遺伝的要因
ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、ジャーマン・シェパードなどの大型犬は股関節形成不全の素因を持ち、変形性関節症になりやすいとされています。 -
外傷や手術の既往
骨折や膝の靱帯損傷(特に前十字靭帯断裂)は関節の安定性を損ない、OAの引き金になります。 -
過度な運動や関節への負担
急激なジャンプや段差の昇降を繰り返す生活習慣も関節の摩耗につながります。
主な症状
変形性関節症の症状は徐々に進行するため、飼い主さんが気づきにくいこともあります。以下のような変化が見られたら要注意です。
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お散歩を嫌がる、歩く距離が短くなった
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立ち上がるのに時間がかかる
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階段やソファに上がらなくなった
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後ろ足を引きずる、歩き方がぎこちない
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関節部分を触られるのを嫌がる
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運動後に足をかばうような仕草をする
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寝ている時間が増えた
初期には「ちょっとした老化のサイン」と見過ごされやすいのですが、実は痛みや炎症が関節で起こっているサインです。
診断方法
動物病院では、問診と身体検査に加えて以下のような検査が行われます。
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触診:関節の可動域、腫れ、熱感を確認
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レントゲン検査:骨の変形、関節隙の狭小化、骨棘の形成などを確認
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CT/MRI(必要に応じて):より詳細な関節構造や軟骨の状態を評価します
これらの検査を組み合わせ、総合的に変形性関節症かどうかを診断します。
治療方法
変形性関節症は「進行を止める」ことはできませんが、「痛みのコントロール」と「進行を遅らせること」が治療の目的となります。
1. 内科的治療
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消炎鎮痛剤
痛みや炎症を和らげ、動きやすさを改善します。長期投与の場合は肝臓や腎臓のモニタリングが必要です。 -
関節保護サプリメント
グルコサミン、コンドロイチン、オメガ3脂肪酸などは関節の健康をサポートします。
2. 外科的治療
一般的には保存治療が適応となることが多いですが、疾患の種類や重症度、保存治療の反応性によっては外科手術が考慮されることもあります。
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関節鏡手術:軟骨や損傷組織を除去
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骨切り術:靱帯損傷に伴うOA予防
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人工関節置換術:重度の股関節形成不全などに適用
3. リハビリテーション
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水中トレッドミル(関節への負担を軽減しながら運動できる)
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ストレッチや筋力トレーニング
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レーザー治療や温熱療法
ご家庭でできるケア
病院での治療と並行して、ご家庭での生活環境の工夫もとても重要です。
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体重管理:肥満は関節の大敵。適正体重を保つことが最大の予防策です。
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適度な運動:無理のない散歩を継続し、関節周囲の筋肉を維持します。
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滑らない床環境:フローリングにはカーペットやマットを敷くと関節の負担を減らせます。
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段差の解消:階段やソファの昇降を控え、ペットステップを設置するのも効果的です。
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サプリメントや食事療法:関節に配慮した療法食も有効です。
予防はできる?
変形性関節症を完全に予防することは難しいですが、次のような習慣でリスクを減らすことができます。
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子犬期からの適正体重管理
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激しいジャンプや急な方向転換を避ける運動管理
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関節にやさしい床環境の整備
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遺伝性疾患の早期発見とケア
まとめ
犬の変形性関節症は「年だから仕方ない」と片付けられがちな病気ですが、実際には進行性の関節疾患であり、早期のケアがとても重要です。
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主な症状は「動きが鈍くなる」「階段を嫌がる」「足を引きずる」など
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診断はレントゲン検査や触診で行われる
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治療は痛みのコントロールと進行抑制が中心
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ご家庭での体重管理や環境整備がとても大切
もし愛犬に少しでも気になる歩き方や行動の変化が見られたら、早めに動物病院で相談してください。適切なケアを続けることで、愛犬がより快適に、元気に暮らせる時間を延ばすことができるようになります。
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