若齢期動物(特に犬や猫)におけるクラスⅠ不正咬合について

こんにちは!

世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です🌳

今回はクラスⅠ不正咬合についてご説明いたします。

 

クラスⅠ不正咬合とは

クラスⅠ不正咬合(Class I malocclusion)は、上下の顎(顎骨)の長さや位置関係が正常であるにもかかわらず、個々の歯の位置異常が見られる不正咬合のことです。これは不正咬合の中で最も一般的なタイプであり、「正常顎関係における歯列不正」とも表現されます。

若齢期動物での特徴

若齢期(乳歯期~永久歯萌出初期)の犬や猫では、以下のような問題が見られます。

代表的な異常

  • 歯の異所萌出(ectopic eruption)

    • 犬歯などが本来の位置から外れて萌出歯が歯ぐきから生えて出てくることし、軟組織や他の歯を傷つける。

  • 過剰歯や未萌出歯による位置異常

  • 乳歯遺残

    • 永久歯の萌出を妨げ、歯列の乱れを引き起こす。

原因

クラスI不正咬合は一般的に非遺伝性の疾患であると考えられている。しかし特定の犬種(例えばシェットランド・シープドッグの上顎犬歯における近心咬合:犬の下顎が上顎より前に出ていて、下の方が前に咬み合っている状態)においては発生率の高い症候群があり、いくつかの症例では遺伝的素因が指摘されている。

クラスI不正咬合は、顕著な全身的あるいは内分泌的問題によって生じるのと同様に、頬/舌圧などの影響(またはその欠如)のような多くの原因から生じ得る。最終的には腫瘍や嚢胞などが形成されることによって、歯の位置が正常なアーチ状から逸現するようになる。以前にはこのような変位は乳歯が遺残することによって起こると信じられていた。しかし人の歯科分野における研究では、乳歯の遺残は不適切な永久歯の萌出により引き起こされることが示されている。

  • 遺伝的要因(特に短頭種や長頭種で多い)

  • 乳歯の早期喪失や遺残

  • 不適切な咀嚼行動や外傷

  • 発育期の栄養不良やホルモン異常

臨床症状

  • 放置すると慢性的な外傷(歯肉、口蓋、唇)を引き起こす可能性がある。
  • 食餌摂取や正常な咬合発育に支障をきたす。

  • 成犬・成猫での矯正が難しくなるため、早期発見・介入が極めて重要

 

治療

クラスⅠ不正咬合は単に外見上だけの問題にとどまる場合もあるが、外傷性または歯周疾患のある症例では治療が必要とされます。

治療にはいくつかの方法があり

①歯に歯列矯正移動

②歯冠切断と生活歯髄治療

③抜歯

などの方法があげられます。

 

まとめ

  • クラスI不正咬合は一般的に非遺伝性と考えられているが、遺伝的素因によると考えられるものもある。
  • 続発する歯の叢生歯が正しく並ばず、重なったり曲がったりして生えている状態)内側への萌出歯が歯ぐきから生えて出てくること)は、歯周疾患の発症を早めることがある。
  • クラスI不正咬合は、歯列矯正上の問題や続発性口唇/歯/歯肉の外傷を引き起こすことがある。
  • 上記の各状態に対する歯列矯正治療は効果的であるが、処置が複雑になり長い時間を必要とする場合がある。

 

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