2025/11/06
こんにちは!世田谷区等々力にあります、けいこくの森動物病院です🌳
幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)とは?
― 吐き戻しが続くときに考えたい病気 ―
愛犬・愛猫が食後によく吐いてしまう、食欲はあるのに体重が減ってきた…。そんなとき、「幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)」という病気が関係している場合があります。
今回は、そんな幽門狭窄について、原因・症状・診断・治療法などをご紹介します。

幽門とは?
胃は食べたものを一時的にため、胃酸や酵素で消化する臓器です。
その出口にあたる部分を「幽門(ゆうもん)」と呼び、ここから十二指腸へ内容物が送り出されます。
幽門は筋肉の輪でできた“弁”のような構造をしており、消化が不十分な食べ物が腸へ流れないように調整しています。
幽門狭窄とは
「幽門狭窄」とは、この幽門部分が何らかの原因で狭くなり、食べ物が通りにくくなる状態を指します。
胃で消化された内容物が十二指腸へうまく流れず、胃に滞留することで吐き戻しや食欲不振が起こるのが特徴です。
犬では比較的よく見られ、猫ではまれな疾患です。
とくに小型犬や高齢犬でみられるケースが多く、慢性的な嘔吐の原因として注意が必要です。
主な原因
幽門狭窄には、大きく分けて「先天性(生まれつき)」と「後天性(あとから起こる)」の2つのタイプがあります。
先天性幽門狭窄
生まれつき幽門部の筋肉が厚く、出口が狭くなっているタイプです。
子犬のころから食後の吐き戻しを繰り返すことが多く、成長しても改善しません。
特に短頭種の若齢犬などで報告が多い傾向があります。
後天性幽門狭窄
小型犬で多くみられるタイプです。原因としては以下のようなものがあります。
- 慢性胃炎:長期間の胃の炎症で幽門部の粘膜が肥厚し、出口が狭くなる。
- 潰瘍や瘢痕(はんこん)形成:胃潰瘍が治る過程で瘢痕化し、幽門部が硬くなってしまう。
- 腫瘍:胃や幽門部に発生した腫瘍(特に腺癌など)が物理的に狭める。
- 異物:おもちゃや骨片などが幽門に詰まり、一時的に通過障害を起こす。
これらの原因によって幽門部が慢性的に狭くなり、食べ物の通過が妨げられます。
主な症状
幽門狭窄では、食後数時間してからの嘔吐が典型的です。
以下のような症状が見られたら注意が必要です。
- 食後しばらくしてから吐く(特に消化中・未消化の内容物)
- 吐いたものに胆汁が混じる
- 食欲はあるのに体重が減る
- 慢性的なげっぷやよだれ、腹部の不快感
- 元気消失、脱水
食べた直後ではなく、時間がたってから吐くのが特徴となり、胃の中に食べ物が停滞しているサインです。
診断方法
必要に応じて以下のような検査を組み合わせて診断を行います。
X線検査(レントゲン)
造影剤を飲ませて胃の動きを観察します。
幽門が狭い場合、造影剤が長時間胃内に残り、十二指腸へ流れにくい様子が確認されます。
超音波検査(エコー)
胃の出口部分の筋肉が厚くなっていないか、腫瘍や潰瘍の有無を確認します。
腫瘍や炎症性の肥厚を区別するのにも有用です。
内視鏡検査
胃カメラを使って幽門の内部を直接観察します。
粘膜の状態や潰瘍の有無を評価でき、生検(組織採取)も可能です。
血液検査
嘔吐による脱水や電解質異常、炎症反応の有無などを確認します。
治療方法
原因や重症度によって治療法は異なりますが、「内科的治療」と「外科的治療」に分けられます。
内科的治療
軽度の幽門狭窄や一時的な炎症が原因の場合に行われます。
- 胃酸分泌抑制薬
- 胃粘膜保護剤
- 胃の動きを促す薬
- 消化の良い食事への変更
ただし、構造的な狭窄がある場合は薬だけでの改善は難しく、多くは外科的治療が必要です。
外科的治療
狭くなった幽門を外科的に広げる方法です。代表的な手術法には以下があります。
- 幽門筋切開術:筋肉を縦に切って広げる方法。
- 幽門形成術:幽門部を切開して再縫合し、出口を拡張する方法。
手術によって通過障害が解消されると、嘔吐が劇的に改善することが多く、予後は良好です。
予後と日常のケア
治療後の予後は、原因や治療内容によって異なります。
先天性の場合は手術で改善が期待できますが、後天性の場合は腫瘍や慢性炎症の程度によって経過が変わります。
再発を防ぐためには、
- 胃に負担をかけない消化の良い食事を続ける
- 食事を一度に与えすぎない(少量多回にする)
- 嘔吐や食欲不振が再発した場合は早めに受診する
といった日常ケアが大切です。
まとめ
幽門狭窄は、慢性的な嘔吐の原因として見逃されやすい病気です。
内科治療で改善する場合もありますが、根本的な治療には外科的処置が必要なこともあります。
「食後によく吐くけれど、元気はあるから様子を見ている」というケースでも、実は幽門の通過障害が潜んでいることがあります。
繰り返す嘔吐や体重減少など気になる症状が見られるときは、早めにご相談ください。
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