犬と猫の急性肝炎とは?〜命に関わることもある肝臓の炎症〜

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こんにちは!世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です。

肝臓は「沈黙の臓器」とも呼ばれ、症状が出にくい臓器です。しかし、一度ダメージを受けると急激に悪化し、命に関わることもあります。今回は、犬と猫にみられる「急性肝炎」について、原因や症状、治療法をわかりやすく解説します。

肝臓の役割と急性肝炎の概要

肝臓は、体内の解毒や栄養素の代謝、胆汁の生成など、さまざまな重要な働きを担っています。そのため、肝臓が障害を受けると全身に影響が及びます。

急性肝炎とは、肝臓に突然強い炎症が起き、肝細胞が急速に破壊されていく状態です。原因によっては回復可能な場合もありますが、重症化すると「急性肝不全」に進行し、命に関わる深刻な状態になります。

急性肝炎の主な原因

犬と猫の急性肝炎には、さまざまな原因があります。代表的なものを以下にご紹介します。

犬の主な原因

  • 感染症
     例:犬アデノウイルス(犬伝染性肝炎)、レプトスピラ症など
     特にワクチン未接種の犬や、野生動物と接触があった犬で注意が必要です。

  • 中毒
     例:キシリトール、特定の植物、真菌類など
     家庭内の誤食が原因になることがあります。

  • 薬剤性肝炎
     抗生物質や鎮痛薬、抗てんかん薬などが原因で肝臓がダメージを受けることがあります。

  • 免疫介在性
     犬の自己免疫性肝炎では、体が自分の肝細胞を攻撃してしまいます。

猫の主な原因

  • 細菌性胆管肝炎(肝胆炎)
     腸内細菌が胆管を通じて肝臓に侵入することで炎症を起こします。

  • ウイルス感染
     例:猫伝染性腹膜炎(FIP)、猫白血病ウイルス(FeLV)などが原因になることもあります。

  • 中毒
     アセトアミノフェン(人間用の解熱鎮痛剤)など、猫にとって極めて危険な薬剤の誤飲が原因になります。

 

急性肝炎の症状

急性肝炎の初期症状は非特異的で見逃されやすいですが、次のような兆候が見られた場合は注意が必要です。

  • 元気消失・食欲不振
     最もよく見られる初期症状です。

  • 嘔吐・下痢
     消化器症状が目立つこともあります。

  • 発熱
     感染症や免疫介在性の場合に見られることがあります。

  • 黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)
     胆汁の流れが滞ったり、赤血球の破壊が増加すると見られます。

  • 尿の色が濃くなる
     ビリルビンという物質が排泄されるため、濃い茶色になることがあります。

  • 出血傾向
     肝臓で合成される凝固因子の不足により、鼻血や皮下出血が起こることも。

  • 神経症状(肝性脳症)
     肝臓の解毒機能が低下し、アンモニアなどの毒素が脳に影響を与えると、ふらつき、興奮、昏睡などが起こります。

 

診断方法

急性肝炎が疑われる場合、動物病院では以下のような検査が行われます。

  • 血液検査
     ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)やASTなどの肝酵素の上昇、黄疸の指標となるビリルビン、凝固系の異常などをチェックします。

  • 画像検査(超音波検査など)
     肝臓の大きさ、形状、腫瘤の有無、胆道の異常などを調べます。

  • ウイルス・細菌の検査
     感染症が疑われる場合にはPCR検査や抗体検査を行うことがあります。

  • 肝生検(必要に応じて)
     正確な診断のために、肝臓の組織を採取して調べることがあります。

 

治療方法

急性肝炎の治療は、原因に応じて大きく異なりますが、基本は以下のような支持療法が中心になります。

  • 輸液治療
     脱水の改善、毒素の排出促進、電解質バランスの調整を目的に行います。

  • 肝保護剤・抗酸化剤の投与

  • 抗生物質
     細菌性肝炎や二次感染が疑われる場合に使用されます。

  • ステロイド薬や免疫抑制剤
     免疫介在性の肝炎が疑われる場合に使用されます。

  • 対症療法(制吐剤、食欲増進剤など)
     食欲不振や嘔吐に対するケアも重要です。

  • 特殊な治療
     中毒物質が明らかな際はそれに応じた解毒剤や、重症例では輸血、入院での集中的な管理が必要となる場合もあります。

 

予後と注意点

急性肝炎は、早期に治療を開始すれば回復可能な病気ですが、重症化すると急性肝不全に進行し、数日以内に命を落とすこともあります。特に高齢動物や基礎疾患がある場合はリスクが高くなります。

また、一見元気に見えても、肝酵素の異常が進行していることがあるため、「少し様子が変だな」と感じたら早めに動物病院を受診しましょう。

まとめ:こんな症状に気づいたら早めの受診を

急性肝炎は、症状が急に現れるため見逃されやすい疾患です。
次のような症状が見られたら、すぐに動物病院での診察をおすすめします。

  • 元気がない、食欲がない

  • 嘔吐や下痢が続く

  • 皮膚や白目が黄色い

  • 尿の色が濃い

  • 理由もなく出血する

  • 意識がぼんやりしている

大切なご家族であるわんちゃん・ねこちゃんの健康を守るために、少しでも気になることがあればお気軽にご相談ください

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