2025/09/11
こんにちは!世田谷区等々力のけいこくの森動物病院です。
犬の眼や皮膚に突然異常が現れる「ぶどう膜皮膚症候群」という病気をご存じでしょうか?
この病気は、免疫の異常によって自分自身の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患の一つです。特に眼と皮膚に強く影響を与えるため、早期発見・早期治療がとても重要になります。今回は、犬のぶどう膜皮膚症候群について詳しく紹介します。
ぶどう膜皮膚症候群とは?
ぶどう膜皮膚症候群(Uveodermatologic Syndrome)は、犬の免疫系がメラニン色素産生細胞を攻撃してしまう病気です。
その結果、眼(ぶどう膜)と皮膚(特に色素を持つ部分)に炎症や変化が起こります。
人間にも「フォークト・小柳・原田病(VKH病)」という非常によく似た病気があり、犬のぶどう膜皮膚症候群はその動物版と考えられています。
好発犬種と発症年齢
この病気はどの犬種にも起こる可能性がありますが、特に以下の犬種で多く報告されています。
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秋田犬
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サモエド
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シベリアンハスキー
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アラスカンマラミュート
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チャウチャウ
中でも秋田犬は好発犬種として有名です。発症年齢は若齢から中年期(6ヶ月齢〜6歳齢前後)に多いとされています。
主な症状
1. 眼の症状(ぶどう膜炎)
最も深刻で、失明につながる可能性があります。
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眼が赤くなる(充血)
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眩しそうにする、まぶたを細める
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涙が多くなる
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黒目が白く濁る(角膜混濁)
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瞳孔が小さくなる
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視覚障害(物にぶつかる、歩き方がぎこちない)
進行すると網膜剥離や緑内障を起こし、最終的には失明に至ることもあります。
2. 皮膚の症状
免疫反応により色素を持つ皮膚が破壊され、色の変化が起こります。
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鼻や口の周りの毛が白くなる(脱色)
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皮膚の色素が抜ける(白斑)
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まぶたや唇、肉球が白っぽくなる
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まれに脱毛や皮膚の炎症
皮膚の変化は見た目の問題だけでなく、皮膚の防御力が下がることで炎症が起こる場合もあります。
原因
ぶどう膜皮膚症候群は、自己免疫疾患の一つです。
免疫は本来、外敵(細菌やウイルス)を攻撃する働きを持っていますが、この病気では誤ってメラニン色素産生細胞を攻撃してしまいます。
原因ははっきりとは解明されていませんが、
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遺伝的素因(特に秋田犬などの日本犬)
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ウイルス感染や環境要因が引き金
と考えられています。
診断方法
診断には以下の要素が組み合わされます。
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臨床症状
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眼と皮膚の両方に異常が出ているかを確認します。
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眼科検査
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スリットランプ検査や眼底検査でぶどう膜炎、網膜剥離の有無などを確認。
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皮膚の検査
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色素が抜けている皮膚の生検を行い、メラノサイト(色素細胞)の破壊を確認します。
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血液検査
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自己免疫疾患の可能性を示す炎症反応や免疫異常の有無を調べます。
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眼の症状だけが先に出ることもあるため、皮膚の変化が出る前に診断がつく場合もあります。
治療方法
治療の目的は、免疫の異常な働きを抑えて症状をコントロールすることです。完治は難しいですが、早期治療で進行を遅らせ、生活の質を守ることが可能です。
1. 薬物療法
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ステロイド剤
強力に炎症を抑え、免疫の過剰反応を沈めます。 -
免疫抑制剤
ステロイドの副作用を減らすために併用されることがあります。 -
点眼薬
眼の炎症を抑えるために、抗炎症薬などが使われます。
2. 定期的な検査
治療中も病気の再燃や副作用が起きる可能性があるため、
定期的な眼科検査・血液検査が欠かせません。
予後
眼の症状が強い犬は失明に至る可能性がある病気ですが、早期に治療を開始すれば進行を遅らせることができます。
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皮膚の色素脱失は回復しにくいものの、生活に大きな支障をきたすことは少ないです。
つまり、この病気では「視力を守ること」が最も重要な治療目標になります。
飼い主さんが気をつけるポイント
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早期発見が何より大切
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眼の赤み、しょぼつき、皮膚の色の変化を見逃さないことが大切です。
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動物病院での定期健診
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特に好発犬種を飼っている場合は、年に数回は健診を受けると安心です。
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投薬の継続
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自己判断で薬を中断すると症状が悪化するため、必ず獣医師の指示を守りましょう。
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まとめ
犬のぶどう膜皮膚症候群は、眼と皮膚に影響を及ぼす自己免疫性疾患です。
特に眼の炎症は失明につながる危険性があるため、早期発見・早期治療が重要です。
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眼の充血やしょぼつき
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鼻や口周りの色素が抜ける
といった症状に気づいたら、なるべく早く動物病院で診察を受けてください。
早めの対応が、愛犬の視力と生活の質を守ることにつながります。
〇 関連する記事はこちら
眼の充血や涙…犬の眼の奥で起こる炎症とそのサイン|ぶどう膜炎について
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